JUNOTA

<<晴れの日の青信号>>

太田潤 2022-123
紙、アクリルガッシュ 192×272 2022-03-24
暮らしの実景 2 / 159

きない幾つもの音が重なり合ってできる川の流れる音、僕らが借りている家はこの川沿いに建っているので、この川の音が僕らの暮らしの背景には常に流れている。住み始めた当初は夜に寝る時に気になったけれど、すぐに慣れた。3年経った今となっては、音が鳴っているという意識もあまりない。夏の大雨の時には岩がぶつかり合ってカチンカチンと音を立てる。気になるのはその時くらいだ。

 僕たちが借りている小さな田んぼまで戻ってきた。家はもうすぐそこだ。熟れに熟れた柿がぶよぶよになって枝にぶら下がっている。冬になって食べ物が見つかりにくくなったからか、今まで見向きもしなかったその実を一羽のカラスがつついている。彼(かどうかはわからないけれど)も僕らが近づくと飛んだ。さっきの小鳥とは違ってそのままどこかへ飛び去って、すぐに姿は見えなくなった。家に着いた。ポケットから鍵を取り出す。かじかんだ指でカギを回す。指先は冷たいけれど、背中にはじっとりと少しだけ汗をかいている。