『宇宙の果てのドーナツ店』
思い出は宇宙の果てを飛んでいた
上もなく下もなく
前もなく後もなく
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる
回転しながら進む
真っ黒な宇宙の果て
地球から見た宇宙には
星が山ほど煌めいて
ずいぶんと
賑やかな場所のように思えたのだが
実際に来てみたら
ぜんぜん
ほとんど
なにもない場所だった
ときどき同じように
訳あって彷徨う記憶とすれ違い
時には立ち止まってお喋りしたりする
そこには全然ちがう暮らしがあった
大半の孤独な時間を過ごすのに
思い出は自分自身の思い出を
噛みしめて過ごす
光の速さで何年も何十年も飛んだ先に
ぽつんと一軒
ドーナツショップがあったので
チョコのをひとつ買ってみた
輪っかを通り抜けたら
なつかしい味がした